あとで 第八話 2026年09月19日 12時15分 | 物語 それから何日か経った。仕事から帰ると、夕飯を作って、片づけをして、時計を見る。やっぱり、少し時間が残っている。あの日に気づいたことは、それからも時々思い出した。時間がないと思っていたけれど、まったくないわけではなかった。ただ、その時間を何に使うのかを考えたことがなかった。旅行に使ってもいい。友人.... 続きを読む>
あとで 第七話 2026年08月29日 12時15分 | 物語 その日は、仕事がいつもより少し早く終わった。帰りにスーパーへ寄るつもりだったけれど、冷蔵庫にはまだ食材が残っていたので、そのまま家へ帰った。夕飯を作り、食事を済ませ、片づけまで終えて時計を見ると、まだ八時を過ぎたばかりだった。いつもなら、もうこんな時間だと思うところなのに、その日は、まだこんな時.... 続きを読む>
あとで 第六話 2026年08月19日 12時15分 | 物語 仕事帰り、スーパーの入口で、一緒に働いていた人を見かけた。声をかけようか迷っているうちに向こうが気づき、「久しぶりやね」と笑ったので、そのまま立ち話になった。今の仕事のことや、共通の知り合いのこと、最近見たテレビの話まで、たいした話はしていないのに、話しているうちに昔のことまで次々と思い出してき.... 続きを読む>
あとで第五話 2026年08月08日 12時15分 | 物語 休日の朝、洗濯機を回していると母から電話がかかってきた。「元気にしてる?」いつものひと言から始まる電話は、畑の野菜がよくできたことや、ご近所さんが旅行へ行ったこと、庭に植えた花が咲いたことへと話が移り、気づけば三十分近く経っていた。「今度、顔見せにおいで」母は何気なくそう言った。「うん、また休み.... 続きを読む>
あとで 第四話 2026年07月28日 12時15分 | 物語 昼休みが終わるころ、スマートフォンが震えた。画面には、学生時代から付き合いの続く友人の名前が表示されている。『来月、久しぶりにみんなで集まらへん?』その一文の下には、何人かの名前が並んでいた。最後に会ったのは、いつだっただろう。お互いに仕事があって、子どもの受験があって、親のことも少しずつ気にな.... 続きを読む>
あとで 第三話 2026年07月21日 12時15分 | 物語 第三話 荷物朝の店内は、いつもと変わらない時間が流れ、売り場を整え、足りなくなった商品を補充し、お客様に声をかけられれば足を止める、その繰り返しのうちに昼前になった。バックヤードへ荷物が届き、店長から「これ、お願いできますか」と声をかけられると、「はい」と返事をして段ボールへ手をかける。飲み物の.... 続きを読む>
あとで 第二話 2026年07月14日 12時15分 | 物語 あとで 第二話 旅の話更衣室のロッカーを閉めようとしたときだった。「ちょっと見て」声のするほうへ顔を向けると、仕事を終えた仲間がスマートフォンを手にして立っていた。「先週、行ってきたんよ」画面いっぱいに広がる青い海を囲んで、「きれいやね」「どこなん?」と声が重なる。「ずっと行きたいと思ってたん.... 続きを読む>
あとで 2026年07月07日 12時15分 | 物語 昼休みの休憩室は、いつも同じようでいて、毎日少しずつ違う。誰かが持ってきたお菓子が机の上に置かれていたり、テレビから流れるニュースが違ったり。そんな小さな変化を除けば、時間は穏やかに流れている。窓の外では、七月の日差しが駐車場のアスファルトを白く照らしていた。「最近、たんぱく質が大事らしいよ」向.... 続きを読む>
わたしを取り戻す朝 第8話 2026年03月31日 12時15分 | 物語 わたしを取り戻す朝第8話 ただ、歩く土曜の朝。目覚ましより少し早く目が覚めた。迷いは、もう大きくはない。机の上の紙は、今日は見ない。鍵を手に取り、車に乗る。街路樹の道。二度目の景色は、初めてより静かだ。白線の内側に車を止める。深呼吸をひとつ。木の扉を引く。前と同じ空気。同じ光。「おはようございま.... 続きを読む>
わたしを取り戻す朝 第7話 2026年03月24日 12時15分 | 物語 わたしを取り戻す朝第7話 理由はいらない水曜の夜。特別なことは、何もなかった。残業もなく、叱られることもなく、褒められることもない。静かな一日。食器を洗いながら、ふと手を止める。あの空間を、思い出す。音が少なく、呼吸がそろう場所。歩くだけの時間。誰にも期待されない時間。ただ、自分の速度で動く時間.... 続きを読む>