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あとで 第七話

その日は、仕事がいつもより少し早く終わった。
帰りにスーパーへ寄るつもりだったけれど、
冷蔵庫にはまだ食材が残っていたので、
そのまま家へ帰った。

夕飯を作り、食事を済ませ、
片づけまで終えて時計を見ると、
まだ八時を過ぎたばかりだった。
いつもなら、もうこんな時間だと思うところなのに、
その日は、まだこんな時間なんだと思った。

お風呂に入るには少し早いし、
明日の準備もできている。
特にすることがない。

そう考えてみると、少し不思議だった。
仕事の日は、時間がないと思っていた。
朝は支度をして仕事へ行き、帰ってから夕飯を作り、
片づけをして、
明日のことを考えているうちに眠る時間になる。
だから、自分の時間などないと思っていた。
けれど、その日は違った。
何も予定を入れていないだけで、
こうして時間は残っている。

ん、今までの時間は、
どこへ行っていたのだろう。
忙しかったことは確かだ。
けれど、振り返ってみると、
「あとでいい」と思って先送りにしたことも、
ずいぶんあったような気がする。

友人への返事も、母のところへ行くことも、
旅行の話も、いつかやればいいと思っていた。
その「いつか」が、いつなのかは考えないまま。
時計を見ると、八時四十分になっていた。
たった四十分なのに、今日はずいぶん長く感じる。
何かを始めるには短い時間かもしれない。
でも、何もしないで終わらせるには、
思っていたより長い時間だった。
そう思いながら、もう一度時計を見る。
明日は仕事がある。

その次の日も、その次の日も、
たぶん同じように一日は過ぎていく。
だからこそ、ほんの少しでも、
自分のために
使う時間があってもいいのかもしれない。
何をするかは、まだ決めなかった。
ただ、
その夜は「もうこんな時間だから」
と急いで一日を終わらせることをしなかった。

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