あとで 第六話
仕事帰り、スーパーの入口で、
一緒に働いていた人を見かけた。
声をかけようか迷っているうちに
向こうが気づき、
「久しぶりやね」と笑ったので、
そのまま立ち話になった。
今の仕事のことや、共通の知り合いのこと、
最近見たテレビの話まで、
たいした話はしていないのに、
話しているうちに昔のことまで
次々と思い出してきた。
「そういえば、あの頃よく笑ってたよね」
不意にそう言われて、少し考えた。
「今も笑ってるよ」
そう返すと、相手は「そうやね」と笑った。
別れてから、買い物をするのを
忘れそうになっていたことに気づき、店の中へ戻る。
夕飯の材料を選びながら、
さっきの言葉を思い出していた。
昔より笑わなくなった、
と言われたわけではない。
それでも、
自分がいつ笑ったのかを思い出そうとすると、
最近のことより、昔の場面ばかりが浮かんでくる。
家に帰ってスマートフォンを見ると、
健康についての記事が目に入った。
運動をすると気分が前向きになることや、
人とつながることが心身の健康にも
良いことが書かれている。
なるほどと思いながら、画面を閉じた。
そんなことは、もう何度も聞いている。
それなのに、今日は少しだけ違って聞こえた。
健康のために何かをするというより、
笑える時間が減っていることのほうが気になったからだ。
夕飯を作りながら、さっきの会話を
思い出してひとりで笑った。
何がおかしかったのか、
もうよく覚えていない。
ただ、久しぶりに自然に笑った気がした。
食卓につくと、
夫が「何かいいことあった?」と聞いた。
「別に」
そう答えたあと、少し考えてから、
「今日、昔の知り合いに会ってね」と話し始めた。
夫は箸を動かしながら聞いている。
話しているうちに、また笑った。
たいしたことではない。
けれど、その夜はいつもより少しだけ、
時間が早く過ぎたように感じた。
一緒に働いていた人を見かけた。
声をかけようか迷っているうちに
向こうが気づき、
「久しぶりやね」と笑ったので、
そのまま立ち話になった。
今の仕事のことや、共通の知り合いのこと、
最近見たテレビの話まで、
たいした話はしていないのに、
話しているうちに昔のことまで
次々と思い出してきた。
「そういえば、あの頃よく笑ってたよね」
不意にそう言われて、少し考えた。
「今も笑ってるよ」
そう返すと、相手は「そうやね」と笑った。
別れてから、買い物をするのを
忘れそうになっていたことに気づき、店の中へ戻る。
夕飯の材料を選びながら、
さっきの言葉を思い出していた。
昔より笑わなくなった、
と言われたわけではない。
それでも、
自分がいつ笑ったのかを思い出そうとすると、
最近のことより、昔の場面ばかりが浮かんでくる。
家に帰ってスマートフォンを見ると、
健康についての記事が目に入った。
運動をすると気分が前向きになることや、
人とつながることが心身の健康にも
良いことが書かれている。
なるほどと思いながら、画面を閉じた。
そんなことは、もう何度も聞いている。
それなのに、今日は少しだけ違って聞こえた。
健康のために何かをするというより、
笑える時間が減っていることのほうが気になったからだ。
夕飯を作りながら、さっきの会話を
思い出してひとりで笑った。
何がおかしかったのか、
もうよく覚えていない。
ただ、久しぶりに自然に笑った気がした。
食卓につくと、
夫が「何かいいことあった?」と聞いた。
「別に」
そう答えたあと、少し考えてから、
「今日、昔の知り合いに会ってね」と話し始めた。
夫は箸を動かしながら聞いている。
話しているうちに、また笑った。
たいしたことではない。
けれど、その夜はいつもより少しだけ、
時間が早く過ぎたように感じた。
