あとで 第三話
第三話 荷物
朝の店内は、いつもと変わらない時間が流れ、
売り場を整え、足りなくなった商品を補充し、
お客様に声をかけられれば足を止める、
その繰り返しのうちに昼前になった。
バックヤードへ荷物が届き、
店長から「これ、お願いできますか」と声をかけられると、
「はい」と返事をして段ボールへ手をかける。
飲み物の入った箱はこれまで何度も運んできた
重さのはずなのに、棚まであと少しというところで
一度だけ床へ下ろし、
抱え直してから残りの数歩を歩いた。
ほんの数秒のできごとで、
誰も気づいてはいないし、
気づくほどのことでもなかったのだろう。
それでも、自分の中には小さな引っかかりが残り、
少し前ならそのまま運べていたような
気がすると思ったものの、それが去年のことなのか、
もっと前のことなのかは思い出せなかった。
仕事を終えてスーパーへ寄ると、
入口には特売の飲み物が箱のまま積まれていて、
買って帰ろうと手を伸ばしかけたところで
昼間の段ボールがふと頭をよぎり、
そのまま一本だけを買い物かごへ入れてレジへ向かった。
家へ帰れば、買ってきたものを冷蔵庫へしまい、
夕飯の支度をして、お風呂を洗い、洗濯物をたたみ、
一日は何事もなかったように過ぎていく。
布団へ入って目を閉じても思い浮かぶのは、
運べなかった段ボールではなく、
一度だけ床へ下ろした自分の手で、
そのたった数秒の出来事が、
今日という一日の中でいちばん静かに心へ残っていた。
朝の店内は、いつもと変わらない時間が流れ、
売り場を整え、足りなくなった商品を補充し、
お客様に声をかけられれば足を止める、
その繰り返しのうちに昼前になった。
バックヤードへ荷物が届き、
店長から「これ、お願いできますか」と声をかけられると、
「はい」と返事をして段ボールへ手をかける。
飲み物の入った箱はこれまで何度も運んできた
重さのはずなのに、棚まであと少しというところで
一度だけ床へ下ろし、
抱え直してから残りの数歩を歩いた。
ほんの数秒のできごとで、
誰も気づいてはいないし、
気づくほどのことでもなかったのだろう。
それでも、自分の中には小さな引っかかりが残り、
少し前ならそのまま運べていたような
気がすると思ったものの、それが去年のことなのか、
もっと前のことなのかは思い出せなかった。
仕事を終えてスーパーへ寄ると、
入口には特売の飲み物が箱のまま積まれていて、
買って帰ろうと手を伸ばしかけたところで
昼間の段ボールがふと頭をよぎり、
そのまま一本だけを買い物かごへ入れてレジへ向かった。
家へ帰れば、買ってきたものを冷蔵庫へしまい、
夕飯の支度をして、お風呂を洗い、洗濯物をたたみ、
一日は何事もなかったように過ぎていく。
布団へ入って目を閉じても思い浮かぶのは、
運べなかった段ボールではなく、
一度だけ床へ下ろした自分の手で、
そのたった数秒の出来事が、
今日という一日の中でいちばん静かに心へ残っていた。
