わたしを取り戻す朝
わたしを取り戻す朝
第5話 見学だけ
木の扉の前で、
足が止まる。
ガラスではなく、
少し重みのある
木の扉。
取っ手に手をかける。
ひやりとした感触。
ゆっくり引く。
中は、
思っていたより
落ち着いている。
広すぎない空間。
やわらかな光。
近くにいたスタッフが、
静かに会釈をする。
「ご見学ですね」
問いというより、
確認に近い声。
私はうなずく。
名前を書き、
簡単な説明を受ける。
余計な音がない。
奥へ進むと、
トレッドミルが並ぶ。
外から見えていた景色。
今は、
同じ空気の中にいる。
歩く人。
ゆっくり走る人。
派手さはない。
誰も急いでいない。
ただ、
それぞれの速度で
続けている。
背中が、
不思議とまっすぐだ。
「無理なく続ける方が
多いですよ」
穏やかな声。
勧めるというより、
事実を置くように。
見学だけ。
今日は
それでいい。
何も決めなくていい。
けれど――
ここまで来た。
それは
小さな事実だ。
木の扉を振り返る。
外の空気は
少し冷たい。
胸の奥は、
わずかに温かい。
エンジンをかける。
ハンドルを握る手は、
来たときより
軽かった。
第5話 見学だけ
木の扉の前で、
足が止まる。
ガラスではなく、
少し重みのある
木の扉。
取っ手に手をかける。
ひやりとした感触。
ゆっくり引く。
中は、
思っていたより
落ち着いている。
広すぎない空間。
やわらかな光。
近くにいたスタッフが、
静かに会釈をする。
「ご見学ですね」
問いというより、
確認に近い声。
私はうなずく。
名前を書き、
簡単な説明を受ける。
余計な音がない。
奥へ進むと、
トレッドミルが並ぶ。
外から見えていた景色。
今は、
同じ空気の中にいる。
歩く人。
ゆっくり走る人。
派手さはない。
誰も急いでいない。
ただ、
それぞれの速度で
続けている。
背中が、
不思議とまっすぐだ。
「無理なく続ける方が
多いですよ」
穏やかな声。
勧めるというより、
事実を置くように。
見学だけ。
今日は
それでいい。
何も決めなくていい。
けれど――
ここまで来た。
それは
小さな事実だ。
木の扉を振り返る。
外の空気は
少し冷たい。
胸の奥は、
わずかに温かい。
エンジンをかける。
ハンドルを握る手は、
来たときより
軽かった。
