わたしを取り戻す朝
わたしを取り戻す朝
第2話 遠回りの続き
あの日から、
封筒はまだ
開けていない。
けれど、
帰り道だけは
変わった。
信号をひとつ、
左へ。
ほんの数分の
違いなのに、
景色が少し
静かになる。
街路樹の道。
あの建物の前を、
また通る。
木々の間から
見える光。
トレッドミルは
今日も
動いている。
同じ時間なのか、
同じ人なのか、
わからない。
けれど、
あの場所には
昨日と同じ
リズムがある。
私は
減速する。
見るため、
ではなく。
見えてしまう、
というほうが
近い。
運転席で
ハンドルを握る手に、
わずかな
汗を感じる。
入るわけでも
ないのに。
まだ、
そのつもりは
ないのに。
それでも、
視線だけが
建物に
残る。
ガラス越しに、
歩く女性。
昨日とは
違う人かもしれない。
それでも
背筋は
まっすぐだった。
年齢は
関係ないのだろうか。
続けている、
ということが
人を
変えるのだろうか。
後続車の
ライトが
ミラーに映る。
私は
アクセルを
踏む。
建物は
ゆっくり
後ろへ流れる。
胸の奥で、
小さな声がする。
「ただ、
歩くだけ。」
それだけなら、
できるかもしれない。
信号が青に変わる。
今日は
それ以上、
考えない。
けれど――
遠回りは、
やめなかった。
第2話 遠回りの続き
あの日から、
封筒はまだ
開けていない。
けれど、
帰り道だけは
変わった。
信号をひとつ、
左へ。
ほんの数分の
違いなのに、
景色が少し
静かになる。
街路樹の道。
あの建物の前を、
また通る。
木々の間から
見える光。
トレッドミルは
今日も
動いている。
同じ時間なのか、
同じ人なのか、
わからない。
けれど、
あの場所には
昨日と同じ
リズムがある。
私は
減速する。
見るため、
ではなく。
見えてしまう、
というほうが
近い。
運転席で
ハンドルを握る手に、
わずかな
汗を感じる。
入るわけでも
ないのに。
まだ、
そのつもりは
ないのに。
それでも、
視線だけが
建物に
残る。
ガラス越しに、
歩く女性。
昨日とは
違う人かもしれない。
それでも
背筋は
まっすぐだった。
年齢は
関係ないのだろうか。
続けている、
ということが
人を
変えるのだろうか。
後続車の
ライトが
ミラーに映る。
私は
アクセルを
踏む。
建物は
ゆっくり
後ろへ流れる。
胸の奥で、
小さな声がする。
「ただ、
歩くだけ。」
それだけなら、
できるかもしれない。
信号が青に変わる。
今日は
それ以上、
考えない。
けれど――
遠回りは、
やめなかった。
